2016年02月12日

「第三次世界大戦秘史」(J.G.バラード 著 福武文庫)読了

 先日、神保町で買ってきた「第三次世界大戦秘史」(J.G.バラード 著 福武文庫)を読了しました。
 SFの巨人の一人、バラードの短編集。物語色の強いSF作品と、ニューウェーブと呼ばれる実験色の強い作品とが半々で載っています。表題作は物語の方の短編で、諧謔色が強めのアメリカを舞台にしたもの。冒頭の「ウォー・フィーバー」は、最近の日本SFで言うと伊藤計劃氏のもののような趣を持つ、現代と地続きのように思われる、しかし世界観が一変するような作品で、一九八九年に書かれたとは思えない新鮮さがあります。優れた小説は古びないという言葉を裏付けるように思われます。
 後半のものは、時代を遡ればヌーヴォー・ロマンと言われる、物語の枠を外して小説の可能性を探ることを目的に据えた一連の作品群の系譜に連なる小説で、小説というものに親しんでいない読者の方には難解な作品ですが、小説を読みすぎて作品の中途で落ちや結末が読めてしまうような小説ずれした私の様な人間には、予測はおろかストーリーの単純な解読さえ拒絶するようなこれら分野は最後に残されたパラダイスのように感じられます。
 この後半作品の非現実さに、読後は現実感が薄れ、ふわふわと覚束ない足取りで冬の夕暮れの中を駅前の居酒屋へと出かけて行きました。
posted by 匿名希望の茅ヶ崎人 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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