2012年04月02日

ボカロPは読むんだ「南極点のピアピア動画」(野尻 抱介 著 ハヤカワJA文庫)読了

 食道炎が徐々にひどくなる。春はいつもこうだ。

 「南極点のピアピア動画」(野尻 抱介 著 ハヤカワJA文庫)を読みました。表紙は宇宙をバックにしたKEIさんの描くどこか初音ミクに似た少女の姿。この小説は、小隅レイという初音ミクのようなボーカロイドと、ニコニコ動画のようなピアピア動画が舞台として出てくる近未来SFです(小隅レイは、cosmic ray 宇宙の光、から来ているんでしょうね)。
 以下、言い換えが面倒なので、ミクに統一します(なぜならミクが好きだから)。
 ミクさんが出てくる小説といっても、ミクさんが全て解決、なんていう話ではなく、初音ミクというソフトが普及した世界にSF的な出来事が起こり、ミクさんの好きな人たちが初音ミクやその周囲の人たちと一緒に解決したり巻き込まれたりする物語です。現在の延長線上にある話になりますね。
 なので、主人公はミクを使う人たち、ミクが好きな人たちです。著者がボカロP(初音ミクを使って作品を発表する人)なので、ミクさんやその周囲の人たちに対する愛が溢れているように感じます。
 また、読者の対象もSF読者というよりは、ボカロを使っていたり聞いている人のようで、七面倒くさい心情描写とか専門的過ぎる説明などは無く、簡単な文章で、しかし色んなガジェットや大風呂敷を広げてはたたんでいきます。ページ数の割に、一冊を読み終える頃にはずいぶんと遠い世界へ連れて行かれます。少ない文章量に多くの情報量をたたきこむのは、さすが星雲賞作家です。
 ボカロ愛にあふれたサービスあふれて内容もあふれた物語。SF用語が出てきたら思わず窓から本を投げ捨てるようなSFアレルギーをお持ちでなければ、普段はSF小説を読まない方にこそお勧めです。
 近未来が舞台なので、いい歳をした人たちがネットスラングで話し合ったりします。個人的には、そこにものすごい未来感を感じてしまったのですが、時代を経てネットスラングを知っている人の数が人口比で多くなると、居酒屋のバカ騒ぎで2ちゃんぽい単語が聞こえてくるのが日常的になったりするのかな、なんて思いましたね。
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2012年03月29日

「星からの帰還」(スタニスワフ・レム著 ハヤカワSF文庫)読了

 アニメTVから藤田咲さんが卒業されてしまった。ゲストとのトークコーナーを眺めるのが楽しみの一つだったのに。
 アニメ「another」は、続きの気になる佳作でございました。キャラメインの作品だと、こういう楽しみ方はあまりできないので、深夜アニメでは割と珍しい部類に入るのでは?

 古書店で手に入れた「星からの帰還」を読了。
 メインテーマは、人間を改造することによってリスクを激減させた社会。ベトリゼーションという施術によって人間から攻撃性を無くし、重力制御ユニットによって物体同士の衝突による人身事故をも無くした未来。そこへ、ウラシマ効果によって十歳しか歳を取らなかった宇宙飛行から帰ってきた現代人(多分、二十世紀人)が迷い込み、困惑し苦悩し自身と向き合うことになる、という話。
 内容は、形や名前からは機能がまったくわからない未来社会のインフラなどから、男女間の関係やその内面など様々。レムの小説は、小松左京氏の多くの大作と傾向を同じくする「シミュレーションSF」が多く、「星からの帰還」も現代の延長上に見えてくる未来の形と、もし現代人が未来へタイムスリップしてしまったら、という二つの面がシミュレートされる。知的好奇心を満たしてくれる一方、娯楽作品を期待する向きには少し退屈な筋書かも知れない。
 この作品のレムは、真面目だ。読者も襟を正し背を伸ばして臨むべし。これはそういう小説だ。
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2012年03月25日

「バレエ・メカニック」(津原 泰水 著 ハヤカワJA文庫)読了

 読む週間、まずは「バレエ・メカニック」読了。
 変容した東京を描く第一章に続いて、日常に戻る第二章と未来の「現実」を描いた第三章でも、ボーダーレスなところのある主人公の主観で描かれているので、どこかファンタジックなものが全編を通して流れている。
 解説や帯の文章、レーベルからいって、SF小説として売られているけど、やはり幻想小説としての要素を強く感じた。SF読みの方で、この本が好きになられたら、ぜひ津原先生の他の本をお手に取っていただきたい。
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2012年02月21日

「F1速報PLUS クラッシュ特集」雑感

 投稿小説はずっと書けず。本当に進まない。
 ねんどろいどぷちは、明日で出荷から二営業日。そろそろ届くだろうか。

 正式には「F1速報PLUS 特集 クラッシュ このスポーツの「宿命」と向き合う勇気」ですが、読了後に一週間くらい経ってます。
 巻頭にある記事は、私がこのムック本を買った理由でもありますが、インディカー・シリーズの2011最終戦で亡くなったダン・ウェルドンの事でした。
 オープンホウィールのトップカテゴリーレースで、レース中に選手が事故死するのは、アイルトン・セナ以来だと思うのですが、私はこの事故を見た後、レースを観戦するのにためらいを感じました。自動車レースは、人が死ぬこともあるんだと実感した事故でした。
 この事故の記事が巻頭にくることで、恐らくこの本の企画がダン・ウェルドンの事故死をきっかけに動き出したのだろうと感じられます。片山右京さんへのインタビューで、依頼を受けた時に片山さんが「趣味が悪い」と言った事が書いてありますが、単なる派手さを狙った趣味の悪い特集号ではなく、事故をきっかけに強化されてきた安全対策がこの本の本当のテーマになっています。また、現在の安全対策の根幹が、アイルトン・セナの事故を代表とする1994年シーズンに多発した重大事故をきっかけになされている事もわかります。セナの事故というのも、この本の中では大きなテーマになっています。
 90年代から00年代は、安全面でのレギュレーションが強化され、ともすればマシンの性能を引き下げたり形状に大きな制約をつけるものだったりしましたが、そのお陰で大きな事故が起こってもドライバーの命が守られているんですね。これを読んだ後に、youtubeで過去の死亡事故の映像を観ましたが、今なら軽症で済むような事故でマシンが燃え上がったりドライバーが亡くなっていたりします。今のレースカーは、そういう意味では最も安全を意識したマシンになっているわけです。
 今年のF1マシンには、ノーズとモノコックの境目に無造作な段差ができていますが、この本を読んだ後ならまあ許せる気がします。インディの、後輪がカバーに覆われたマシンも、事故という場面でどう安全に寄与するのか、大いに興味を惹かれます。
 さあ、もうすぐ今シーズンもレースが始まります。
posted by 匿名希望の茅ヶ崎人 at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月19日

アニメ「.hack//Quantum」を見ていて思い出した、トム・クランシーの「ネットフォース エクスプローラーズ」

 ケーブルテレビのキッズステーションで、OVA「.hack//Quantum」が放送されているので見ているのですが、そういえばと思い出したのが、トム・クランシーの珍しいティーンエイジャーが主人公の作品「ネットフォース エクスプローラーズ」(スティーブ・ピチェニックとの共著 アスペクト刊)の第一巻「陰謀のゲーム」でした。
 読んだのがずいぶんと昔なので、あらすじなどは覚えていないのですが(手元にはあるんですが)、十代の少年少女たちがネットゲームに渦巻く陰謀を解決するために国の機関の下で活躍する、というストーリーです。
 .hackシリーズと比べると、事件の根幹にSF的な仕掛けがあまり関わってこない(どちらかというと、現代的なセキュリティの問題か?)点が、アニメや漫画に影響を受けている日本作品との差異に感じました。解決の段階できちんとした法的な方法がなされ、主人公の未成年たちにはどうしても関わることができない部分が語られる。社会の中で少年少女が関与できない部分というのは、いわゆるサブカル的な作品では語られることが少ない(というか、作品内で描写されないこともある)と思うのですが、ここら辺は堅い作品をものしてきたトム・クランシーの方向性ゆえかも知れません。
 ……というか、主人公たちの描写って、共著者の仕事によるものじゃないかと邪推しますが。

 第一巻の「陰謀のゲーム」を店頭で見た当時は、トム・クランシーが青少年向け作品を書いた、ということで妙な期待感を抱いていたのが印象に残っていて、また思い出したわけです。
posted by 匿名希望の茅ヶ崎人 at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする